2026.05.12

【vol.11 / イベントレポート】NTTドコモビジネスが挑む「森林クレジット」事業の裏側~カーボンオフセットで終わらない。価値を伝え、選ばれ、使われ続ける仕組みづくり~

「森林クレジットを買う企業は増えている。でも、それで終わってしまっている企業がほとんどだ」——そんな課題意識から、NTTドコモビジネスは住友林業と組み、まったく新しいプラットフォームを立ち上げました。

ICT企業がなぜ林業に? 異業種協業の3年間に何があったのか? 社内を巻き込む仕組みはどうつくるのか? 本レポートでは、「第11回 キミッツカレッジウェビナー|NTTドコモビジネスが挑む『森林クレジット』事業の裏側~カーボンオフセットで終わらない。価値を伝え、選ばれ、使われ続ける仕組みづくり~」で、当日語られたエッセンスをダイジェストでお届けします。

このレポートで分かること

少人数チームで異業種協業をやり切るために、最初にやるべきこと

森林クレジット市場で起きている「3つの構造的な課題」とは何か

NTTドコモビジネスがICT企業として林業に関わる理由と勝算

クレジット購入を「社員体験」や「地域交流」につなげた具体的な方法

開催概要

開催日時:2026年4月15日(オンライン)

ゲスト:小笠原 氏(NTTドコモビジネス株式会社 ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室)

モデレーター:松下 登志朗(株式会社ソマノベース)

「需要はある、でも市場が動かない」——その理由

GX-ETSの本格運用が始まり、J-クレジットへの関心は急速に高まっています。ところが森林由来のクレジットに限ると、全流通量に占める割合はわずか5%程度。需要があるのに、なぜ市場が動かないのでしょうか。

小笠原氏は「創出・審査・購入、三者それぞれが別々の壁にぶつかっている」と整理します。

創出側:「何をどこに入力すればいいか、分からない」

申請書類はExcelで何十シートにもわたり、年々入力項目は増えています。自分のケースに不要なシートがどれかも判断しにくく、「とりあえず諦めた」という声も現場から聞こえてくるほどです。

審査機関:「急増する申請を、数社で回している」

審査の9割は書類確認。対象森林の位置情報と膨大な紙資料を照合する手作業が続いています。申請件数は急増しているのに、全国の審査機関はわずか数社。このままでは供給量の「天井」が見えてきます。

購入側:「どのクレジットを買えばいいか、分からない」

林野庁の調査では、購入を検討する企業の多くが「創出地域や実施者の情報を確認したい」と回答しています。ところが現状では、その情報にたどり着くこと自体が難しいのです。

「森かち」が挑む、三者同時の課題解決

住友林業の林業ノウハウとNTTドコモビジネスのICT技術を掛け合わせた「森かち」は、クレジットを「創出支援→審査支援→売買支援」もしくは、「創出→審査→売買」を一気通貫で支援可能なプラットフォームです

申請書類の自動作成支援、GISを活用したデータ管理と審査効率化、そして購入者が「なぜこのクレジットを選ぶか」を納得できる充実した販売ページ——それぞれの機能がどう設計されているか、詳細はアーカイブ動画・講演資料でご確認いただけます。

「買って終わり」を、「関わり続ける理由」に変える

ウェビナー後半、最も反響が大きかったのがこのテーマです。クレジット購入を社内の脱炭素活動と接続し、従業員が「自分ごと」として関われる体験を設計する——その具体策が次々と語られました。

「森林クレジットを、単なるCO₂排出量のオフセット手段として考えているのではなく、森林が持つ本質的な価値を社会や企業に組み込む仕組みにできると考えています」

実際の取り組み事例として紹介されたのは、以下のようなものです。

  • ソマノベースの「戻り苗」と連携し、社員が育てた苗をクレジット創出の森へ植樹する体験プログラム
  • ラグビーチームD-Rocksが試合のCO₂をオフセットし、そのつながりで地域の田んぼラグビーへ選手が参加する地域交流
  • 地元の日本酒にカーボンオフセットを組み込み、製品自体が環境貢献のストーリーを持つ取り組み

「なぜこれがNTTドコモビジネスにできるのか」——その答えは、アーカイブ動画でぜひ直接お聞きください。

▶︎アーカイブ動画はこちら

3年間の協業で乗り越えた壁は何か

コアメンバー2名・開発2名という少人数で、文化も言語も異なる2社がプロジェクトを動かし続けた3年間。小笠原氏が振り返ったのは、3つの壁についてです。

壁1|日本語なのに、会話が噛み合わない

「APIとかUIUXとか言うと相手に通じない。逆に『間伐』とか『主伐』とか言われても最初はまったく分からなかった」。お互いが同じ日本語を話しているのに、何度もすれ違いが起きたといいます。それをどう乗り越えたか——そのプロセスが、新規事業担当者には刺さる内容でした。

壁2|「揉めそうな話」こそ、最初にする

お金や責任分担の話は、どうしても後回しにしたくなるものです。でも「それが一番のリスクだった」と小笠原氏は明言しました。具体的にどのタイミングで、どう切り出したのか——その判断の背景まで語られています。

壁3|リソース不足を、情熱で補えるか

「一つの山を越えると、息つく暇もなく次の山が来る。それが3年以上続いた」。少人数で新規事業を動かす難しさを赤裸々に話してくださった場面は、参加者からも多くの共感の声が寄せられました。

参加者Q&Aから——当日、一番盛り上がった質問

当日は10問近い質問が寄せられました。ここでは3つをご紹介します。より詳しい回答はアーカイブ動画でご確認ください。

Q. 最初からフルスペックで作ったのか、スモールスタートだったのか?

A. 住友林業がJ-VER時代から積み上げたノウハウがあったため、ビジネスモデルの骨格は比較的早く描けました。そのため、システム要件も含めて最初から全体構想を描く方針を選んでいます。「スモールスタートが正解とは限らない」という小笠原氏の言葉が印象的でした。

Q. 高齢化・人材不足という現場の課題に、ICT企業としてどう向き合うか?

A. 「和歌山や愛媛の現場に実際に行って、危険な作業を目の当たりにしました。画面の前でソリューションを考えているだけでは絶対に分からないことがある」。ICT企業が現場に飛び込んで見えてきたことについて、具体的なエピソードとともに語られています。

Q. 田んぼの中干し延長クレジットは、生物多様性への影響はないのか?

A. 「水生生物への影響を懸念して、実施しないと判断する農家さんもいます」と正直に答えてくれました。環境全体を俯瞰したクレジット活用のあり方について、現場目線のリアルな声が聞けた場面です。

アーカイブ動画・講演資料でもっと深く

このレポートはウェビナー全体のダイジェストです。「森かち」の機能詳細、協業プロセスの具体的なエピソード、Q&Aでの深掘りトークなど、当日の熱量そのままにお届けしているアーカイブ動画はこちらよりご視聴いただけます。

「森林クレジットを事業にどう活かすか悩んでいる」「異業種との協業を検討している」「社員を巻き込む環境活動のヒントが欲しい」——そんな方にこそ、じっくり見ていただきたい内容です。ぜひご覧ください。

▶︎アーカイブ動画はこちら

Webinar by キミッツカレッジとは

「森に関わるためのKnowledgeをOpenにしよう。」をコンセプトに、森林に関わる企業・現場の専門家をお招きして開催している無料ウェビナーシリーズです。脱炭素やネイチャーポジティブへの関心が高まる一方で、企業が実際に動こうとすると直面する「専門的すぎる壁」を、リアルな声と事例でフラットにお届けしています。

ウェビナー・イベントの最新情報はこちら:https://somanocollege.peatix.com/

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