2026.06.16

【vol.12 / イベントレポート】「遠くの森」を「足元の緑」から繋ぐ。〜東邦レオが語る、都市の緑を「ただの植栽」で終わらせない、新しい緑・空間のつくり方~

「オフィスの緑化が、ただの維持管理コストで終わってしまっている」「森は遠すぎて、社員に手触り感を持ってもらえない」——そんな悩みに、都市緑化のトップランナー・東邦レオが、まったく新しい視点を提示しました。

都市の緑はなぜコスト削減の対象になるのか。グリーンインフラの「本当の価値」をロジックに乗せるとはどういうことか。足元の街角の雨水が、山奥の鹿柵と繋がるとはどういう意味か。本レポートでは、「第12回 キミッツカレッジウェビナー|遠くの森を足元の緑から繋ぐ。~都市の緑を『ただの植栽』で終わらせない、新しい緑・空間のつくり方~」で、当日語られたエッセンスをダイジェストでお届けします。

このレポートで分かること

  • 「自社林がない」「森が遠い」企業でも始められる、手触り感のある環境施策の第一歩
  • 「なんとなく尊い」で終わらせない、グリーンインフラの真の価値とロジックの描き方
  • 都市の足元の緑が、流域・地方の森へと繋がっていく仕組みと具体事例
  • 継続的な自然・地域との関わりを生むコミュニティ作りのポイント

開催概要

開催日時:2026年5月20日(オンライン)

ゲスト:大庭 氏(東邦レオ株式会社 プロジェクトディレクター)

モデレーター:松下 登志朗(株式会社ソマノベース 法人事業部)

「緑っていいよね」だけでは動かない——グリーンインフラの現実

脱炭素やネイチャーポジティブへの関心が高まる中、「グリーンインフラ」という言葉が急速に一般化しています。
ところが大庭氏は、その現実をこう切り出しました。

「緑は『総論いいよね』となりがちなところが一番の課題。現実の建設現場では、コスト削減の対象になりやすく『この木って何でいるんだっけ?』と問われる」

グリーンインフラとは平たく言えば「緑を活用した国土基盤づくり」です。従来のコンクリート(グレーインフラ)だけでなく、緑を使ってインフラを増強し、生活基盤を作るという考え方です。関東大震災では街路樹や広い道が延焼防止の機能を持っていたと言われており、近年ではゲリラ豪雨による内水氾濫防止のための雨水管理、ヒートアイランド対策としての暑熱緩和、ウェルビーイングや景観形成など、様々な機能が謳われています。

ただし大庭氏が強調するのは、「ふわっとさせない」ことです。

「『なんとなく尊い』だけでなく、例えば暑熱緩和やゲリラ豪雨対策にしっかりフォーカスして目的を定めること。何でもできると言わずにフォーカスポイントを絞り、ロジックを描くことが大事」

「公共投資の価値がある」「一次産業の生産量を金融のロジックに乗せる」「企業のCSRや価値向上に繋がる」——そのように意義とロジックをセットで持たなければ、現実の意思決定の場で緑は生き残れない。これが東邦レオが現場で積み重ねてきたリアルな教訓です。

街角の雨水から、山の鹿柵まで——都市と森を繋ぐ広域の視点

では、具体的にどのような取り組みが都市と森を繋ぐのか。大庭氏は複数の事例を紹介しました。

街角の「レインガーデン」

道路に降った雨をそのまま流すのではなく、庭の中に浸透させ、下の砕石層に貯留する構造です。水がいっぱいになったらオーバーフローで排出される仕組みで、根が詰まったり広がらないといった技術的な課題への対処も含め、市民参加型で環境を作っていくプロセスそのものが価値を持ちます。

大阪・御堂筋の街路樹再生

車線を歩道にするプロジェクトでは、道路の下に砕石を入れて浸透性にし、特殊な土と腐植を入れることで空隙を保ちます。樹木が水と空気を求めて根を伸ばし、樹冠が広がることで暑さ対策にもなり、涼やかな空間ができる——都市の更新サイクルの中で、敷地内でできることが長期的な環境形成とどう接続していくかを考えた事例です。

三重県・藤原岳での鹿柵設置

山頂部の平原では鹿の食害で下層植生が衰退し、土砂崩れが始まっており土砂災害リスクが増大しています。鹿が下層の植物を食べることで栄養循環にも負の影響を与える——そうした場所に投資してリスクを抑え、流域の林業・農業・漁業が一体となって投資と経営を行えるようになる、それが本当の広域グリーンインフラだと大庭氏は説きます。

「まずは鹿柵を作ったり植林をするといったアクションが人々の意識を変え、中長期的な投資回収への機運醸成に繋がる」

「手触り感のなさ」を、どう解決するか

クロストークでソマノベース・松下から投げかけられたのは、多くの企業担当者が直面するリアルな課題でした。「森が遠すぎて社員に手触り感を持ってもらえない」——この悩みに対し、大庭氏はこう答えます。

「一言で言ってしまえば、スケールの違い。都市の中で緑ができることは色々あるが、本当にこの緑や土の技術を使って社会課題を解決しようとすると、都市以上に森や国土をどう作るのかという話題の方が当然規模は大きくなる。限られた都市緑化の枠組みの中だけで壮大なテーマを謳おうとすると限界があり、少し無理筋な説明になることもある」

しかし大庭氏が強調するのは、「都市の緑をやめた」という話ではないということです。

「両方が繋がって健全に循環していくものだと思う。本質的に困っているところを見て、足元の緑がどう見え方が変わるのかを考えるのが一番面白い」

企業が求めるニーズも変化しています。単に「森に関わる」だけでなく、地域とのストーリー作りや、より解像度を上げた関わり方へ——都市の足元の緑が、遠くの森と「繋がっている」ことを社員が実感できる設計こそが、これからの環境施策の要になるのかもしれません。

「コミュニティ作りが目的化するとしんどくなる」——継続の仕組みとは

継続的に自然や地域と関わり続けるコミュニティをどう作るか——これは多くの企業担当者が頭を抱えるテーマです。大庭氏はここでも率直に語りました。

「コミュニティ作りも、目的がはっきりせずに目的化してしまうとしんどくなるのは間違いない」

現在大庭氏が出向するベンチャー企業では、GDPの概念を書き換え、地域の人的資本・自然資本・社会関係資本で評価していく動きに注目しています。カーボンクレジットを細分化し、環境価値や環境行動に対してインセンティブを与えていくプロジェクトがその一例です。

「逆算して『これをやらなきゃ』という明確なビジョンを持ってコミュニティ作りを行うと、みんなで目指すべき方向が共有できて楽しくなる」

また2027年には横浜でGREEN EXPO 2027(国際園芸博覧会)への出展が予定されており、地域の持続可能性をどう経済システムとして作るか、都市と地方を繋いでワンチームで取り組むプログラムも進行中です。

参加者Q&Aから——当日、印象的だった質問

当日はチャットにさまざまな質問が寄せられました。ここでは2つをご紹介します。より詳しい回答はアーカイブ動画でご確認ください。

Q. デベロッパーなど都市開発の企業とのやり取りや意見の対立はあったか?

A. 「要件通りにやってくれればいい」という状況の中で、「人が滞留できるスペースを作って新しい活動が行えるようにする、そのために緑をこういう風に配置するんだ」という意図を持って投資計画を描かないと意味がないとアプローチしに行き、担当者とぶつかることはあった、と大庭氏は語りました。ただ、全体の意思決定で考えると意外と妥当かもしれないという話になることもあるといいます。専門的な視点と企業のロジックの違いを、どう翻訳して成果に繋げるか——共通言語を持てるパートナーを見つけることの重要性を改めて感じさせる回答でした。

Q. 都市に地域の大学が関われるような可能性はあるか?産学連携の事例はあるか?

A. 「いくらでもありますね」と大庭氏。造園系の研究、コミュニティ醸成の調査、微生物発電のような新技術の実証、公園と連携したPBL(課題解決型学習)事業など、様々な切り口が考えられると言います。ソマノベースにも学生から社会実装の場を求める相談が増えているといい、産学連携の機会は確実に広がっていることが伝わりました。

アーカイブ動画でもっと深く

このレポートはウェビナー全体のダイジェストです。グリーンインフラの技術的な詳細、流域マネジメントの具体的なプロセス、Q&Aでの深掘りトークなど、当日の熱量そのままにお届けしているアーカイブ動画はこちらよりご視聴いただけます。

「緑化をコストではなく投資に変えたい」「都市の拠点から森との接点を作りたい」「継続的な環境施策の仕組みが知りたい」——そんな方にこそ、じっくり見ていただきたい内容です。ぜひご覧ください。

▶︎アーカイブ動画はこちら

Webinar by キミッツカレッジとは

「森に関わるためのKnowledgeをOpenにしよう。」をコンセプトに、森林に関わる企業・現場の専門家をお招きして開催している無料ウェビナーシリーズです。脱炭素やネイチャーポジティブへの関心が高まる一方で、企業が実際に動こうとすると直面する「専門的すぎる壁」を、リアルな声と事例でフラットにお届けしています。

ウェビナー・イベントの最新情報はこちら:https://somanocollege.peatix.com/

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