2026.06.24
【vol.13 / イベントレポート】「森林レンタル」という逆転の発想。〜シシガミカンパニーが語る、木材生産以外のフィールド活用と、事業の入り口と出口〜

「森を活用する=木材を生産する、もしくは木を切って施設を建てる」というイメージが根強く、多額の初期投資や環境負荷への懸念から、プロジェクトを踏み出せずにいる企業も少なくありません。
大規模な開発を行わずに森の価値を引き出すにはどうすればいいのか?
本レポートでは、「木を切らない、施設を建てない」という逆転の発想で、ありのままの森の空間を貸し出す森林レンタルサービス『forenta』を展開する株式会社シシガミカンパニー 代表取締役 田口房国氏をお招きした「第13回 キミッツカレッジウェビナー」の内容をダイジェストでお届けします。
このレポートで分かること
- 「木材生産」や「開発」に頼らない、空間としての森林の価値
- 施設なし・低投資で「森の価値」を最大化するマネタイズの裏側
- 企業が遊休資産(社有林)を活用するための「森林レンタル」という選択肢
- リスク管理やコミュニティ醸成など、現場運営のリアルな実態
開催概要
開催日時: 2026年6月17日(オンライン)
ゲスト: 田口 房国 氏(株式会社シシガミカンパニー 代表取締役)
モデレーター: 松下 登志朗(株式会社ソマノベース 法人事業部)
「木を切らない、施設を建てない」——空間としての森林価値に気づく
木材を植えてから収穫するまでには30〜40年という長い時間がかかり、現代の社会活動のスピード感とは大きなギャップがあります。また、人を呼ぶために施設を建てようとすれば、自然を壊すことになり本末転倒になることも。
田口氏が注目したのは、森が持つ「空間」そのものの価値でした。コロナ禍を機に、静かな環境で自分だけの時間を過ごしたいというニーズが高まっていることに気づき、ありのままの森を年間契約で貸し出す『forenta』を立ち上げました。当初17区画の募集に対し440組の応募(倍率25倍)があったことは、森の「空間」としての価値が証明された瞬間でした。
低投資で利益を残す、マネタイズの裏側
『forenta』の最大の特徴は、初期投資とランニングコストの圧倒的な低さです。
インフラ整備をほとんど行わないため初期費用が抑えられ、運営側が負担する実務は「月に2回程度の見回り」のみ。キャンプ場のように常駐スタッフや施設管理が不要なため、損益分岐点が低く、撤退リスクも少ないという大きなメリットがあります。ロイヤリティや経費を差し引いても売上の6〜7割が利益として残るこのモデルは、個人の副業だけでなく、自社林を持て余している企業にとっても魅力的なマネタイズの選択肢となっています。
利用者が自ら森を管理する、新しいエコシステム
さらに驚くべきは、利用者が自発的に森を手入れしてくれるという点です。
「人や社会から離れたい」「自由に使いたい」という目的で集まった利用者たちは、自ら下草を刈り、落ちている枝を拾ってブッシュクラフト(自然の素材を利用したキャンプスタイル)を楽しみます。結果として、山主が頭を悩ませていた下草刈りなどの管理業務が軽減され、林内が綺麗に保たれるというポジティブな循環が生まれています。「価値のない山」だと思い込んでいた場所に人が集まり、利用者と共に森を管理していくこの仕組みは、新しい森林保全のカタチと言えます。
参加者Q&Aから——当日、一番盛り上がった質問
当日はチャットにさまざまな質問が寄せられました。ここでは厳選した3つをご紹介します。より詳しい回答はアーカイブ動画でご確認ください。
Q. 焚き火による火災の可能性や近隣との兼ね合いなど、リスクにはどう対処していますか?
A. 「火の取り扱いについては直火禁止などの利用規約を定めています。また、自治体が発表する林野火災注意報などの情報をキャッチし、危険な時期には焚き火を禁止するなどの対応を行っています。『自然を完全にコントロールすることはできない』という前提のもと、利用者に自己責任で楽しんでもらうことも重要だと考えています」
Q. 貸し出している土地の地目は「山林」のままでしょうか? 事業化のために地目変更はしていますか?
A. 「地目は山林のままです。施設を建てたり大規模な開発を行わないため、用途変更等の複雑な手続きを必要とせず、遊休資産となっている山林をそのまま活用できるのがこの事業の強みです。現在ある林道や作業道などのインフラをうまく活用することがポイントです」
Q. 利用者間のコミュニティ化など、当初の想定と違った意外な発見はありましたか?
A. 「『1人になりたい』という目的で来る人もいれば、『同じ趣味を持つ人と繋がりたい』という人もおり、ニーズが多様化していることに気づきました。過度にこちらから仕掛けることはしませんが、水戸のキャンプエリアのように自然発生的なコミュニティが生まれることは歓迎しており、今後の利用のきっかけになるのであれば様々な展開を考えていきたいです」
アーカイブ動画・講演資料でもっと深く
このレポートはウェビナー全体のダイジェストです。森林レンタルの立ち上げプロセスや、マネタイズの具体的な裏側、Q&Aでの深掘りトークなど、当日の熱量そのままにお届けしているアーカイブ動画はこちらよりご視聴いただけます。
「自社林の活用方法に悩んでいる」「多額の投資をせずに森と関わりたい」「新しい環境事業のヒントが欲しい」——そんな方にこそ、じっくり見ていただきたい内容です。ぜひご覧ください。
▶︎アーカイブ動画はこちら
Webinar by キミッツカレッジとは
「森に関わるためのKnowledgeをOpenにしよう。」をコンセプトに、森林に関わる企業・現場の専門家をお招きして開催している無料ウェビナーシリーズです。脱炭素やネイチャーポジティブへの関心が高まる一方で、企業が実際に動こうとすると直面する「専門的すぎる壁」を、リアルな声と事例でフラットにお届けしています。 ウェビナー・イベントの最新情報はこちら: https://somanocollege.peatix.com/
