2026.09.07

【vol.15 / イベントレポート】「木」を着る時代へ。「木材」から「服」を創るアパレル発・森の出口戦略。~Playfulが語る「木糸」を通じた資源循環と異業種共創のリアル~

「森林保全やESG経営に取り組みたいが、自社事業とどう結びつければよいか分からない」「単なる寄付や備品購入で終わらせたくない」——そんな葛藤を抱える企業は少なくありません。

第15回「Webinar by キミッツカレッジ」では、国産材から生まれた新素材「木糸(もくいと)」で服を創り、森林資源の新たな活用領域を切り拓くPlayful株式会社 代表取締役社長の岡崎圭佑氏をお招きしました。異業種であるアパレル業界からの参入における泥臭い裏側や、丸太1本を300万円超の価値へと変える資源循環ビジネスのロジックを伺いました。

このレポートで分かること

  • 丸太1本4,000円の価値を約780倍(300万円超)に高める「木糸(もくいと)」の循環モデルと経済性
  • アパレル×林業という異業種参入でぶつかった壁と、川上から川下までを巻き込む熱い対話プロセス
  • 単なるCSRにとどめず、企業の「本業」をそのまま森林保全へ還元させる共創ロジック

開催概要

  • 開催日時:2026年8月19日(オンライン)
  • ゲスト:岡崎 圭佑氏(Playful株式会社 代表取締役社長)
  • モデレーター:松下 登志朗(株式会社ソマノベース 法人事業部)

林業の「赤字構造」を破る新たな出口戦略。「木糸」が秘める驚異の経済効果と機能性

日本の森林は国土の約7割を占めていますが、林業の現場では「木を出荷するたびに約1,650円/本の赤字が出る」という厳しい構造的課題に直面しています。手入れがされない放置林の増加は、土砂災害や生態系の破壊といった社会問題へ直結しています。

この危機的状況に対し、Playfulの岡崎氏は木材を建材として売るだけでなく、セルロースを抽出して和紙化・紡績する「木糸(もくいと)」という新しい出口戦略を提示します。

「丸太のまま売れば約4,000円にしかならない小径木や間伐材も、木糸にしてアパレル製品へと高付加価値化することで、丸太1本あたり約312万円——およそ780倍の経済価値を生み出すことができます」(岡崎氏)。

木糸は環境に優しいだけでなく、天然由来の消臭・抗菌性、綿の3分の1という驚きの軽さ、高い吸速乾性・調湿性、82.7%のUVカット率を兼ね備えています。さらに、使用後は「約3ヶ月で土に還る(生分解性)」という圧倒的な機能性を誇ります。製品が売れるほど利益の一部が森林整備や植林へ還元される「森林循環ビジネスモデル」を確立しました。

異業種参入のリアル。「アパレル×林業」の壁を乗り越えた熱い対話とサプライチェーン構築

前職の繊維商社時代、展示会で木糸を紡ぐ職人と出会ったことが岡崎氏の原点でした。「アパレルに使える!」という直感から社内ベンチャーを立ち上げ、後に事業譲渡を受けてPlayful社を設立。しかし、異業種であるアパレルから林業分野への参入には多くのハードルが存在しました。

林業・製材という「川上」から、紡績・織布という「川中」、そしてアパレル・販売という「川下」に至るまで、文化や習慣が異なるステークホルダーを一貫して繋ぐ必要があったためです。

「最初は業界の接点も知識もない状態でしたが、工場や職人さん、林業現場のキーマン一人ひとりと膝を突き合わせ、『この事業を通じて日本の森を蘇らせたい』という想いを伝え続けました」(岡崎氏)。

情熱的な泥臭い対話を重ねた結果、アパレルにとどまらず、東京プリンスホテルのスイートルームウェア(500着納品)や関西・大阪万博の医療スタッフユニフォーム採用、さらには大手インテリアメーカー・サンゲツとの「木糸カーテン」共同開発など、多様な異業種共創が次々と実現していきました。

「着た服が森の肥料になる」。本業の消費をそのまま環境保全と企業価値へ還元するロジック

いくら「環境に良い」と謳っても、商品としての魅力や経済性が伴わなければビジネスは持続しません。木糸プロダクトは、着心地やデザイン性、機能性という高い品質を前提として展開されています。

企業顧客にとっては、従来のユニフォームやインテリア空間を木糸製品に置き換えるだけで、自社の「本業の活動」がそのまま脱炭素や生物多様性保全に直結します。

「役目を終えた服を捨てるのではなく、山に埋めれば約3ヶ月で分解され、そのまま樹木を育てる良質な肥料になります。製品を買うこと、着ることが、そのまま森を育てる体験になるのです」(岡崎氏)。

単なる寄付型のCSR(社会貢献活動)とは異なり、購買活動と森林保全がダイレクトに連動する仕組みを構築。さらに、取り組みの成果を可視化・データ化することで、企業のESG経営、ブランディング、採用差別化といった非財務価値の向上にも大きく貢献しています。

参加者Q&Aから——当日、一番盛り上がった質問

  • Q. 木糸の原料となるスギやヒノキは、何年生(樹齢)のものでも活用できるのでしょうか?

A. 基本的には樹齢を問わず活用可能です。間伐材や小径木(樹齢20年程度)はもちろん、製材時に出る端材や、バット・鳥居の制作過程で生じる端切れなどからも糸化に成功しています。木材からセルロースを抽出してチップ化できれば素材として再生できるため、未利用材の新しい出口として幅広く対応できます。

  • Q. 糸づくりから生地・製品化までのリードタイムや、商業施設・ホテル等で求められる「防炎性能」への対応はどうなっていますか?

A. 新規開発の場合、糸から生地にするまで約半年〜1年ほどのリードタイムがかかるのが現状の課題です。そのため現在は糸や生地の在庫を一定保持しつつ、小規模な試作(POC)から段階的に進める体制を整えています。また、ホテルやオフィス等で必須となる防炎性能(JIS規格・消防法適合)についても、サンゲツ様をはじめとするパートナー企業と共に技術開発を進めており、最高基準の防炎ラベル(イ・ロ)取得に対応可能な体制を確立しています。

  • Q. 木糸製品は、実際に土に埋めるとどれくらいで自然分解されるのでしょうか?

A. 一般的な綿(コットン)が土中で分解されるのに約1年かかると言われているのに対し、木糸製品は約3ヶ月で完全に生分解されて土へ還るというエビデンスを取得しています。化学溶剤を使わないオーガニックな製法にこだわっているため、分解された成分はそのまま森林や畑の良質な肥料(有機物)となり、自然環境に一切の負荷を与えません。

アーカイブ動画・講演資料でもっと深く

このレポートはウェビナー全体のダイジェストです。「木糸」がもたらす圧倒的な経済価値の算出ロジック、アパレルや空間プロデュースにおける異業種共創の具体的プロセス、Q&Aでの深掘りトークなど、当日の熱量そのままにお届けしているアーカイブ動画はこちらよりご視聴いただけます。

「自社の本業を通じて環境貢献やESG経営を推進したい」「単なる寄付やCSRではなく、持続可能な循環型ビジネスモデルを作りたい」「木材の新たな出口戦略や異業種連携のヒントを探している」——そんな方にこそ、じっくり見ていただきたい内容です。ぜひご覧ください。

▶︎アーカイブ動画は こちら

Webinar by キミッツカレッジとは

「森に関わるためのKnowledgeをOpenにしよう。」をコンセプトに、森林に関わる企業・現場の専門家をお招きして開催している無料ウェビナーシリーズです。脱炭素やネイチャーポジティブへの関心が高まる一方で、企業が実際に動こうとすると直面する「専門的すぎる壁」を、リアルな声と事例でフラットにお届けしています。

ウェビナー・イベントの最新情報はこちら:https://somanocollege.peatix.com/

イベント一覧へ戻る