2026.07.23
【vol.14 / イベントレポート】サステナブル初心者が挑む、都市と森を繋ぐ木造オフィス。~一過性のPRで終わらせず「社内外の味方」を増やすサンケイビル担当者の社内突破のリアルなプロセス~

「サステナブルな取り組みをやりたいが、専門部署もなく、何から手をつければいいか分からない」——そんな悩みを抱える企業担当者は少なくありません。しかも予算は限られ、事業収支への説明責任もついて回ります。
本レポートでは、自社初の木造中高層オフィスビル「KiGi AKIHABARA」を実現した株式会社サンケイビル 建築技術部の渋谷氏・稲岡氏をお招きした「第14回 キミッツカレッジウェビナー」の内容をダイジェストでお届けします。
専門知識ゼロからスタートし、社内の理解をどう広げ、竣工後も続く発信の仕組みをどう設計したのか。他社の担当者にもそのまま応用できる、実務のリアルなプロセスをまとめました。
このレポートで分かること
- 経営層への定期的な情報発信が、木造プロジェクトの起点になった経緯
- 「非財務的価値」を「財務的価値」につなげるロジックの作り方
- 大きな打ち上げ花火ではなく「スターマイン型」で小さく発信し続ける戦略
- 「社会」「会社」「担当者個人」の3つの意味づけが、プロジェクトを前進させた理由
開催概要
開催日時: 2026年7月15日(オンライン)
ゲスト: 渋谷 高陽 氏、稲岡 理絵 氏(株式会社サンケイビル 技術本部)
モデレーター: 松下 登志朗(株式会社ソマノベース 法人事業部)
専門知識ゼロから手探りで始まった部署横断チームの挑戦
「KiGi AKIHABARA」は、東京都千代田区東神田に所在するサンケイビルの建て替えプロジェクトとしてスタートしました。当社初の木造ハイブリッド中高層オフィスビルを建てることと、それを通じたサステナブルな取り組みの発信を目的に、技術本部が主体となり、複数部署を横断するメンバーでプロジェクトが組成されました。
このプロジェクトが動き出す手前には、技術部隊による地道な積み重ねがありました。半年に1回程度のペースで「木造建築の技術は世の中でこう進んでいる」という情報を経営層に発信し続けていたことが、社長からの「1棟木造でやってみよう」という号令につながったといいます。業界全体で木造建築への気運が高まっていたタイミングとも重なり、経営層の判断を後押しする土壌ができていました。
プロジェクト始動後は、若手からベテランまでのメンバーで議論を重ねてコンセプトを5つに整理し、「KiGi AKIHABARA(木でつながる、人がかがやく)」というブランド名とロゴを、外部の伴走者とともに作り上げています。
▼プロジェクトの詳細は、以下の公式サイトよりご覧いただけます。
秋葉原の木造ハイブリッドオフィスビル「KiGi AKIHABARA」公式サイト
事業収支のプレッシャーを越え、「非財務価値」への転換で掴んだ腹落ち
木造中高層建築は通常のビル建設よりコストがかかります。事業収支だけで説明しきれない中、他社の統合報告書などを参考に、独自の「非財務的価値を財務的価値につなげる」ロジックを構築しました。取り組みがどのように企業の知的・人的・社会的資本を増大させ、最終的に成約率向上などの財務的メリットへ還流するかを図式化し、社内の合意形成に活用しました。
あわせて重視したのが、「社会にとっての意味」「サンケイビルにとっての意味」「担当者にとっての意味」という3つの視点です。サステナブルというテーマは社会的な意義として理解を得やすい一方、会社にとっての貢献は前述のフローで整理し、最後に担当者一人ひとりが「自分にとってどんな意味があるプロジェクトか」を言語化する機会を、プロジェクト中盤で改めて設けました。トップダウンで始まったプロジェクトほど、担当者自身が腹落ちしていないと物事が前に進まないという実感が、この整理につながっています。
社内説明では、「理解してもらう」よりも「GOを出してもらう」ことに重点を置いたといいます。前例のない挑戦でも、小さく試すことでリスクやダメージを最小化できることを伝え、複数の理由づけを用意して合意形成を進めました。
打ち上げ花火ではなく「スターマイン型」で広げる、都市と森の新しい繋がり方
竣工時のみ話題化する「打ち上げ花火型」ではなく、小さなコラボレーションを継続的に発信し続ける「スターマイン型」の戦略を採用。その象徴的な取り組みが「戻り苗」です。これは、どんぐりから苗木を育て、竣工後にビルへ移設してテナントと共に育てた後、森へ植林するプロジェクトです。都市にいながら森の循環を肌で感じ、次世代へ繋ぐ教育的な意義も込めています。
このほか、既存杭の再利用や太陽光発電の設置、イヌワシの生育環境保全のために伐採された木材の家具への活用など、多様なパートナーとの共創を積み重ねています。ダメージを最小化しながら小さな施策を数多く試すことで、前例のない挑戦を前に進めてきました。
参加者Q&Aから——当日、印象的だった質問
Q. 「そもそもやる意味があるのか」という社内の声に、どう向き合ったか。
技術部が半年〜1年に1回のペースで経営陣に木造建築の潮流を地道にインプットし続けました。「今やらなければ取り残される」という危機感を共有し、機運を醸成したことが、社長の「まずは一棟やってみよう」という決断に繋がりました。
Q. 非財務価値を経営層にどう腹落ちさせていったのか。
「このビル自体を実験棟と位置づける」という発想の転換が転機になりました。単体の収益性だけでなく、他物件への横展開の可能性や、人材獲得・社員の成長といった観点を提示し、担当者自身の熱量をぶつけたことで、中長期的な企業価値向上としての理解を得ることができました。
Q. リスクを最小化する上で、最も大切にしたポイントは何か。
「まずはテストとしてやる」と宣言し、失敗も含めて将来の資産になるというコンテキストを共有しました。信頼できる外部パートナーと組み、ダメージが少ない規模で小さな施策を多く試すことで、挑戦への心理的ハードルを下げることができました。
アーカイブ動画でもっと深く
このレポートはウェビナー全体のダイジェストです。専門部署なしから部署横断プロジェクトを前進させるリアルなプロセスや、非財務価値への転換の具体的なエピソード、Q&Aでの深掘りトークなど、当日の熱量そのままにお届けしているアーカイブ動画はこちらよりご視聴いただけます 。
「環境配慮の取り組みと事業収支の折り合いに悩んでいる」「専門部署がない中でサステナビリティ活動を推進したい」「一過性で終わらない広報の仕組みを知りたい」——そんな方にこそ、じっくり見ていただきたい内容です。ぜひご覧ください 。
▶︎アーカイブ動画はこちら
■ Webinar by キミッツカレッジとは
「森に関わるためのKnowledgeをOpenにしよう。」をコンセプトに、森林に関わる企業・現場の専門家をお招きして開催している無料ウェビナーシリーズです。脱炭素やネイチャーポジティブへの関心が高まる一方で、企業が実際に動こうとすると直面する「専門的すぎる壁」を、リアルな声と事例でフラットにお届けしています 。
ウェビナー・イベントの最新情報はこちら:https://somanocollege.peatix.com/
