
2025.02.10
【導入事例】コミュニティの力で社員と森林をつなぐ。 JALマイレージバンク社が戻り苗と取り組むESG活動とは
NEWS
導入事例
購入者が苗木を育て、山に植林することで、誰でも山づくりに参加できる新しいカタチの観葉植物「MODRINAE(以下、戻り苗)」。
今回は、そんな戻り苗を活用し、森林保全に取り組む株式会社JALマイレージバンク様の事例をご紹介します。
同社では、2024年に22鉢の戻り苗を導入。戻り苗の仕組みや森林課題について理解する勉強会を開催した後、新入社員16名が初期配属先である札幌地区の社宅で苗木を育成し、東京本社では5つの部署と社長が1鉢ずつを担当して育成しています。また、2024年11月には、自ら苗木を植える植樹祭にも参加されました。社員一人ひとりが育成に責任を持ち、取り組みを通じて森林保全への意識と行動を深めています。
今回は、実際に取り組みを推進されている以下の4名様にお話をお伺いしました。
左から、倉原 和成様(取締役)、矢沢 慎吾様(札幌地区統括マネジャー)、鍋島 諒子様(企画総務部)、大浦 美咲様(企画総務部)
目次
航空業が直面するCO2排出の課題に挑む、JALグループのESG活動
森林保全に直接関わる、戻り苗への参加
戻り苗導入後の変化と工夫
JALマイレージバンクが挑む、これからの森林保全
航空業が直面するCO2排出の課題に挑む、JALグループのESG活動
ーまずは、JALグループ様が取り組むESGの取り組みについて教えてください。
倉原様:JALグループは航空機を運航している会社ですので、事業の特性上、CO2を排出しています。航空機による移動は他の手段に比べるとCO2排出量が多いのが現状です。そのため、私たちは「豊かな地球」を守り、次世代へ引き継ぐことを大きな使命として取り組んでいます。
「豊かな地球」とは
サステナビリティにおけるJALグループの8つの重要課題(マテリアリティ)の1つとして定められたもので、主に「気候変動への対応」「限られた資源の有効活用」「環境汚染の予防」「騒音の低減」「生物多様性の保全」に取り組んでいる。
JAPAN AIRLINES 「サステナビリティに関する主な取り組み項目(指標と目標)」 https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives/
ーグループの中では、どのように取り組まれているのでしょうか。
倉原様:現在、JALグループ会社(43社)がそれぞれ地球環境保全のためのアイディアを出し合い、実行しています。これらの取り組みはJALグループ全体で共有し、定点観測することで継続的な改善に繋げています。たとえば、プラスチック削減では、機内やラウンジで使い捨てプラスチックの使用を削減する取り組みをしています。具体的には、歯ブラシの柄の部分及び包装紙をFSC認証紙へ変更したり、機内販売のショッピングバッグを100%植物由来の素材にするなどの取り組みを行っています。
ーJALマイレージバンク様ではどのような取り組みをされてきたのでしょうか。
倉原様:当社の事業は、JALマイレージバンク会員の情報管理やマイルの運用を扱っているため、事業活動においてCO2を排出することはありません。そのため、社員一人ひとりが日常業務の中で環境保全に取り組むことを重視しています。
大浦様:たとえば、ペットボトルキャップの社内回収やフードロスの削減、マイボトルの推奨に取り組んできましたね。ペットボトルキャップは、再利用してくれる業者にお渡しし、リサイクル資源として活用いただいています。またフードロスでは、消費期限の近い商品を事業者から購入し、社員に販売する取り組みを行っています。これにより、廃棄予定だった食品の削減に貢献するとともに、社員間でもサステナビリティ意識を高める機会となっています。
ペットボトル回収の様子
倉原様:このほか、2023年より「JALグリーンライフマイル」を実施しています。これは、航空機が排出するCO2をオフセットする「JALカーボンオフセット」や、環境に配慮した商品の購入でマイルがもらえるサービスです。社員だけでなく、お客さまの環境に対する意識が高まり、行動変容にも繋がればと思っています。
JALグリーンライフマイルとは
https://www.jal.co.jp/jp/ja/121campaign/2023/greenlife-mile/
ー様々な取り組みをされている中で、課題に感じられたことはありますか?
大浦様:これまでは間接的に関わることが中心でした。たとえば、ペットボトルキャップの回収はできますが、再利用までは直接手を加えることができませんでした。もちろん意味はありますが、もっと直接的に関わる取り組みができないかと模索していました。そんな中で、ソマノベースさまの「戻り苗」に出会い、「これなら私たちにも直接的な貢献ができる」と感じ、導入を検討することになりました。
森林保全に直接関わる、戻り苗への参加
ー倉原様とお会いしたのは、グループ会社様での研修でしたよね。弊社奥川がお話をさせていただいて、その時に倉原様とお会いしました。正直、どんな第一印象でしたか?
倉原様:まず、森林の課題がこんなに奥深いことに驚きました。CO2削減に向けて、木や森林は大きな要になります。ですが、課題も多い。たとえば、森林の再生には長い時間がかかること、保全活動には多くの人手や資源が必要なことなど、それぞれに時間も労力もかかります。これは長い時間をかけて、みんなで協力して向き合わなければならないと感じました。先の通り、JALグループは航空機の運航を通してCO2を排出していますので、その分、環境保全に対する使命感も改めて強く感じましたね。
ーそこから導入までいただいたのは、何がポイントだったのでしょうか。
倉原様:戻り苗のストーリーに強く惹かれました。地域の山に植わっている苗を買って育てる取り組みはこれまでもグループ会社で行っていましたが、戻り苗では、自分自身の手元で手をかけて苗木を育てられるところから参加できるのが新鮮でした。育てる中で苗に対する愛着や愛おしさが湧いてくる、さらには、植林も、自分たちで植えることもできる。これなら、自分たちが直接的に、そして一連の流れで森林保全に関わることができるのが魅力的でした。
これなら、私たちも森林との繋がりを深め、社員一人ひとりが「自分の苗木」を通して森林保全への意識を高めていくストーリーを築いていけると思いました。長い時間がかかる活動だからこそ、その心に訴えることができるストーリー自体が重要だと感じたんです。
ー戻り苗はまさにその点にこだわっていたので、嬉しいです。
倉原様:私たちも、以前よりも深く森林保全に関われて嬉しいです。あとは、巻き込みやすいという点も大きかったですね。これまでも様々な取り組みをしてきましたが、結果が形に見えないことが多く、達成感が得られにくかったんです。その点、戻り苗は苗木そのものが手元にあり、育つ過程や植林の現場を直接見ることができる……これが達成感を感じやすくしてくれると思いました。さらに、心に伝わるストーリー性があることで、社内や友人、家族にも共感を得やすく、取り組みの成果が目に見えることで仲間を巻き込む力も強い……結果として、「みんなでできる」「続けられる」取り組みになると感じましたね。
ー実際に導入いただく際、意識したことはありますか?
倉原様:背景をしっかりと伝えることを意識しました。「やらされ感」があると目的が達成できません。そこで、ソマノベース代表の奥川さまにお越しいただき、勉強会を実施しました。なぜ森林保全に取り組むのか、戻り苗の意義、この苗木1本にどんな意味があるのかをしっかり理解してもらう場になりました。
勉強会の様子
ーアンケートにもご回答いただきましたが、皆さん感想をびっしり書いていただいていましたね!
そうですね、タイミングもよかったですね。勉強会の後、新入社員は出向先の札幌に移り、一人暮らしの自宅で苗木を育てていました。防災についても話がありましたので、一人暮らしの心得としても役立ったようです。
勉強会のワークシートより抜粋
戻り苗導入後の変化と工夫
ー新入社員様は1人1つ、東京の本社では5部署と社長の計6鉢をご導入いただきました。新入社員様の反応はどのようなものだったのでしょうか。
矢沢様:苗木を育てて森に返す、というところに興味をもっていました。入社後、初期配属となる、札幌のコンタクトセンターで勤務するタイミングで育て始めたので、少し寂しい初めての一人暮らしの部屋に、自分の家族のような、同居人のような特別な存在になっていたようです。
新入社員様の苗木
また、苗木を育てる過程で「どうやったらうまく育つのか」といった会話が同僚間で増えたようです。さらに、東京の社員とも戻り苗を通じて会話が生まれる場面がありました。勤務地が違うと中々コミュニケーションが取りにくいですが、戻り苗を通じて繋がりが生まれたことは嬉しいですね。
ー新入社員様からは苗木についてのご相談も多くいただいていて、愛情を感じました。
矢沢様:そうですね。やはり勉強会のおかげもあり、自分たちが苗木を育てる意味を十分理解していたからこそだと思います。将来この苗木が何十年も森で育ち、森を守っていく。そう考えると自然と責任感も芽生えたのだと思いますね。
ー本社の皆さんの反応はいかがだったのでしょうか。
倉原様:本社ではオフィスで育てる形なので、新入社員のように「家族や同居人」という感覚とは異なり、「職場の一員」のような存在になっています。
鍋島様:戻り苗のおかげで、部署内や部署間のコミュニケーションが増えました。苗木に名前をつけて「うちのXXくん大丈夫かな?」とか、「うちのXXくんはこんなに大きくなったよ」という会話が自然に生まれるんです。
大浦様:他部署から「どうしたらこんなに育つの?」と質問されたりして、部署間の会話のきっかけになりましたね。
倉原様:背景を理解しているからこそ、「枯らしちゃいけない」という責任感が生まれているのだと思います。最初は遠慮がちでしたが、次第にそれぞれ社員が主体的に水やりをするようになり、戻り苗が職場に馴染んでいきました。
ー皆さん本当に大事に育てていただいているようですが、何か工夫されていることはあるのでしょうか。
鍋島様:導入しっぱなしにしないことが重要だと考えています。月一で育苗状況をまとめてソマノベースさまに提出し、アドバイスをいただいています。また、ソマノベースさまからも育て方のポイントをまとめた資料を定期的にいただき、それを社員に共有しています。最近ではオンライン相談会も実施しました。ソマノベースさまと、社員15名ほどが参加し、事前に集めた20個近くの質問をもとに情報共有を行いました。こうしたやり取りを通じて、苗木への愛情がさらに深まっていると感じます。
オンライン相談会の様子
ーそのようにされている理由はなんですか?
鍋島様:「導入して終わりじゃない」ということを強く感じたからです。正直、決められたときに水をあげれば育つと思っていたんです。ですが、育て始めて1ヶ月程経過したころ、他の部署を覗いてみると枯れている苗木がありました。「え、枯れるんだ!」と驚きましたが、「勝手に育つわけではない」と実感しました。実際に育てる経験を通じて、この取り組みの本質に触れた気がします。導入して終わりではなく、森に返すまでが1つのミッション。そのために何ができるのか、何をやるべきかを考えた時、定期的に参加者とコミュニケーションを取ることが重要だと気付きました。
倉原様:これは長期戦です。一足飛びにゴールさせることはできません。数多くのコミュニケーションを取り、小さな成功体験を積み重ねて共有していくことが重要です。矢沢さん、大浦さん、鍋島さんが頻繁にアウトプットし、戻り苗のコミュニティを形成しているからこそ、こんなに継続できているのだと思います。当社は、JALマイレージバンク会員さまとのコミュニティが事業基盤の会社です。戻り苗を通じて、改めて社内でもコミュニティ作りの重要性を実感しました。これからも、このコミュニティを作ることの取り組みが当社の文化としてさらに根付いていくことを期待しています。
JALマイレージバンクが挑む、これからの森林保全
ーこれからの森林保全への取り組みについて、どのようにお考えですか?
倉原様:まず、CO2を排出するJALグループ企業として、引き続き森林課題の解決に積極的に貢献していきたいと考えています。航空運送事業の特性上、環境への影響をゼロにすることはできませんが、それを補うための活動をこれからも続けていきます。幸い、社員の間でも森林への関心が高まりつつありますので、こうした意識をさらに広げ、より多くの人を巻き込む取り組みを目指したいですね。
ー戻り苗についてはどのように発展させたいですか?
倉原様:新入社員をフックに、社内で戻り苗をもっと増やしていきたいと思っています。加えて、現在の取り組みを土台に、JALグループ全体に広げられれば、さらに大きなインパクトが生まれると感じています。戻り苗を通じて生まれたコミュニティを育て、グループ内外で活動を共有することで、JALグループとしての一体感や持続可能性への意識を高めていけるのではないでしょうか。
大浦様:私たちが担当を離れた後も、この取り組みが続いてほしいですね。苗木を育てることや植樹に参加することは、短期間で劇的な変化をもたらすわけではありません。でも、一歩ずつ活動を続けることで、長期的に大きな成果を生むと信じています。今後は他の社員にも植林に参加してもらい、苗木を実際に森に返す経験を多くの社員にしてもらえればと思います。
倉原様:戻り苗を「育てる」ことだけでなく、「森に返す」その先のプロセスまで定着させることが重要です。この取り組みは、単に苗木を育てるだけでなく、人の意識や行動を変える力があると感じています。最終的には、JALマイレージバンクだけでなくJALグループ全体で、環境への責任を果たしつつ、お客さまと社員が共に参加できる持続可能な取り組みを進めていきたいですね。航空機がもたらす移動という価値を通じて、森林との関係人口を増やし、より多くの人が森林保全に貢献できる未来を目指しています。
ーJALマイレージバンク様の中で愛情たっぷりに育てていただいた戻り苗や戻り苗を中心にしたコミュニティの輪が大きくなっていくこと、私たちもとても楽しみです。お話をお聞かせくださり、ありがとうございました!
戻り苗は、「土砂災害による人的被害をゼロにする」を目指すソマノベースが運営しています。
戻り苗以外にも、様々な形で森との関わり方をコーディネートしていますので、興味をお持ちいただいた方はぜひお気軽にご連絡ください。(問い合わせ先:info@somanobase.com)
最後までお読みくださり、ありがとうございました!